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こんにちは、ゆーにです。
10月下旬からNPOや中間発表、学祭にレポートと忙しく、記事が書けませんでした。

今、大学院で生物多様性保全学特論という講義を受けております。
その授業でテーマになっているのが外来生物。

もう、ね。私の世界。うそだけど。
でも楽しいです。私の一番の専門分野ですからね。

その授業で私は世界の外来生物に関するレポートを少し書きました。

今日はそのレポートのネタになった生物を紹介しますね。↓


270px-Icerya-purchasi.jpg
(wikipediaより転載)

なんじゃこりゃぁ。

これは、イセリアカイガラムシというカイガラムシの仲間です。別名ワタフキカイガラムシともいいます。

カイガラムシはカメムシ目に分類される昆虫で、草本や樹木の病害虫として知られております。
口に針を持っており、それを植物に差し込んで養分を摂取し、生活しています。

多くのカイガラムシは写真のように、からだが蝋物質で覆われております。
植物から得る養分というのは、光合成産物であり、糖が多いのです。
その糖分を過剰に体内に取り込まないように、摂取した糖分を蝋質の分泌物に変えて体表から排出します。すると写真のような蝋物質に覆われたからだになるのです。

写真のイセリアカイガラムシは、メスだと思われます。
からだの後ろ半分の蝋物質のところに卵嚢を持っているのです。
オスの外見はハエみたいな形をしているようで、滅多に見られないようです。

生殖は単為生殖が多いのだとか。単為生殖ができるって事は、爆発的に増えることが可能ですね。


さて、何故この樹木病害虫をレポートに取り上げたのか。

それは、この虫がオーストラリア原産であり、外来生物として爆発的に増えたことと、生物防除に一応成功した例だからです。

1868年、アメリカのカリフォルニアにこの種が侵入しているのが見つかりました。
ミカンなどの柑橘類によくつくので、果樹園に大きなダメージを与え、柑橘系の果樹園の将来を危うくするほどになりました。

当時の防除法であった青酸ガスや燻煙も効果がなかったようです。
なんたってからだに蝋でできたヨロイがありますからね。現代でも殺虫剤が蝋物質に阻まれて、効かないことがあるそうです。

そこで昆虫学者ケベルがオーストラリアに渡り、そこでこのイセリアカイガラムシを食べるベダリアテントウというテントウムシの仲間を発見しました。

180px-Rodolia_cardinalis_USDA.jpg
イセリアカイガラムシを食べるベダリアテントウ(wikipediaより転載)

1888年からアメリカへテントウムシを送り、139個体を導入したところ3年の間にイセリアカイガラムシを制御してしまいました。

天敵の人為的導入、すなわち生物防除の最初の例となったのです。

この方法はイセリアカイガラムシに悩まされていたヨーロッパ、シリア、エジプト、南アフリカ、ハワイ、ニュージーランド、南アメリカ、そして日本でも実行されました。

日本では1908年に静岡でイセリアカイガラムシが発見されましたが、1912年にテントウムシを配布し、カイガラムシの数を減少させ、制御に成功したとのことです。

イセリアカイガラムシもベダリアテントウも数は減らしたままですが、探せばまだ見つけることができるそうです。


この事例は世界初、世界規模で天敵導入による生物防除に成功した例であります。

そして、そのあとこれと同じ事例は確認されていません。

というのも、ベダリアテントウのようにイセリアカイガラムシを主に食べる、言い換えるならほとんどの餌をある一種に限定するスペシャリストってなかなか存在しないのです。

スペシャリストであるよりも、多くの種を食べられるジェネラリストであるほうが生き残る確率は高くなりますもんね。

だから、天敵導入しても他の生物を捕食したりして、逆に生態系に悪影響を与えることが多いのですね。
ハブ退治に入れたマングースなんかも、他の生物を捕食しちゃってますよね。わざわざ戦って勝たなきゃいけないハブよりも、手軽に食べられる生き物を食べるほうが効率いいから。
単にハブとマングースの行動時間帯が重ならないという理由もありますけど。

ベダリアテントウとイセリアカイガラムシ。
大陸で勝ち抜いてきた生き物でないから、特定の種を中心に食べても生存していける天敵関係が成り立ったのだと思います。(まぁAUSは大陸だけど・・・)
だから導入しても大きな問題にならなかった。

今はどうでしょう。おそらく生物防除のための天敵導入自体が危険な行為になるでしょう。
持ち込まれた天敵が何をするかわかりませんから。

もし生物防除をしたいならば、現地の生き物を使って防除しなくてはならない時代だと思います。あるいは人の手で何とかするか。

ベダリアテントウも、イセリアカイガラムシも日本をはじめ各国に定着してしまった。害虫駆除の意味では成功したかもしれないけど、また爆発的増加を引き起こさなかった意味でも成功かもしれないけど、オーストラリアの固有の生き物が全世界に広まってしまった。

生物多様性が均一化してしまう、という観点、外来生物の観点から見るならば、成功ではありませんよね。

現象としては、制御に成功した。しかし、その意義を考えると・・・?
非常に難しい問題です。

もっとも、経済活動を優占しなければいけないときや、またそうであった当時ならば、この方法は大成功ですが。環境や多様性を守る今、この方法は使えるでしょうか?

生物防除を行うなら、次の時代に来ていると思います。
この方法が失敗だったとは言わない。でも、現代はもっとよりよい方法を用いなければならない。
そうではないでしょうか。

参考文献
チャールズ・S・エルトン(川那部ら訳) 『侵略の生態学』 思索社 1988
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2008.11.14 / Top↑

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