上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
こんにちは、ゆーにです。今日の記事は!国際生物多様性の日シンポジウム!ではなく!約4ヶ月前に行われたシンポジウムの報告をします(^^;)遅筆ですみません。
今日の記事は長い上にちょっと専門的です。がんばって読んでください(笑)

2月11日、日本獣医生命科学大学にて、「外来野生動物を知って農林業文化を守る」というシンポジウムが開かれ、参加してまいりました。

日本の外来野生動物による農林業被害は2007年度で全国1625ha、被害額は5億8000万円にのぼったといわれております(農水省)。これらの外来野生動物は野菜・果物だけでなく、人家へも被害を及ぼしています。

そこで、アライグマやハクビシン、ヌートリアなどの外来野生動物の生態と具体的な被害防除について研究成果を発表し、広く社会に知っていただくため、シンポジウムが開催されました。

講演者は大学や研究機関、NPOの方々全部で10名でした。

それぞれすばらしい講演をしてくださり、その内容をある程度メモしてありますが、講演者順に記していくと内容が前後するので、ハクビシンやアライグマなど動物ごとに面白いと思った内容、これは重要だと感じた内容をまとめていきますね。

参考は森林技術第803号、またシンポジウムの発表からです。

■アライグマ

・目撃例
アライグマは、平成20年にはもはや全国各地で見られるようになっております。全国で繁殖しているというわけではありませんが、目撃(確認)されているようです。
関東では、特に神奈川県の三浦半島と埼玉県の旧比企郡に集中しているようです。

・被害
農林水産省の統計では、アライグマの被害額が増えているようです。トウモロコシ、メロン、スイカに大きな被害があります。一晩で100㎡のトウモロコシ畑が全滅したこともあります。
また、人家の屋根裏や床下に棲みつき、騒音被害、糞尿の悪臭被害も起こしております。

・生態と対策
アライグマは夜行性で、森林からはあまり離れないようです。水系沿いに現れることが多く、針葉樹林地よりも広葉樹林地のほうが多いようです。
昼間のねぐらは樹洞、樹上、土穴、側溝、排水管ネットワーク、人家(特に人が住まなくなった場所)などだそうで、出産場所は土穴、樹洞などだそうです。土穴はアナグマが掘ったものなどを利用します。

アライグマ対策を行うには、どれくらいアライグマが生息しており、どれくらいの増加率で増え、どれだけの捕獲努力をかければいいのかを知ることが重要になります。

アライグマの増加率を調べる上で重要なのが出産率などの生態と死亡率です。
北海道で調べられた限り、まずアライグマの交尾ピークは2月、出産ピークは3~5月、授乳は4~6月、離乳は7月以降だったそうです。離乳後、ある時期にぴたっと子供がいなくなり、子別れをするそうです。
また繁殖率は、0歳では0%(産子数0匹)、1歳だと66%(産子数3.6±1.3匹)、2歳以上だと96%(産子数3.9±1.3匹)だったようです。
千葉や大阪、和歌山で調べられたものとあわせると、1歳の繁殖率が50~73%、2歳が81~100%であり、平均産子数が1歳で2.0~3.6匹、2歳で3.6~3.9匹だったそうです。地域差はあまり無いようです。

ちなみに、アライグマの年齢を調べるのには、歯のセメント質に形成される成長線を数えることで推定できるようです。

今では、増加率と死亡率をあるモデルに入れ、今後の個体群動態をシミュレーションし、そこから捕獲率や捕獲時期などを変えることで根絶にかかる時期や捕獲効果を検証できるそうです。

根絶には、夏以降に行われる農作物被害対策の駆除では不可能です。
というのは、農作物の収穫時期の捕獲率は、他に食べるもののない春季と比べて3分の1に低下してしまうからです。
アライグマの生育確認後早期に駆除に乗り出すほうが費用対効果が高く、大規模な捕獲対策が根絶への近道です。

アライグマの授乳期(春季)における集中的捕獲が個体数増加の抑制に効果的です。

駆除以外の方法では、物理的な防護柵、音や光、忌避物質を用いることもできますが、一時的にしか効かず、時間経過とともに効果が薄れていくようです。
テーピング法というトウモロコシを茎ごとビニールテープで巻いてしまう方法もある程度効果が出るそうです。が、もっとも効果が高いのは電気柵で、物理柵よりも効果は低くなります。
物理柵は、一部分だけを多い、一部分を食害用に開放するといった措置をとれば、完全に防止することはできませんが囲った部分の被害を抑えられる可能性が高くなります。




無  何もしない
小  テーピング法      小規模農園向き
中  物理柵(防風ネット)  中規模農園向き
大  電気柵          大規模農園向き

というようにまとめられるようです。対策者ごとに収穫物の必要量を考慮し、それに見合う対策を行うことが大事です。

・駆除
捕獲個体の分析によるモニタリング、箱ワナ以外の捕獲方法の開発などを今後行う必要があります。
ねぐらをコントロールできれば防除に有効ともいわれます。
ワンウェイ・ゲート方式のワナも開発中だそうです。

トラップシャイな個体もいるので、そのような個体をどう対策するかも今後必要となります。


■ハクビシン

・被害
アライグマと同様、ハクビシンも被害額が増えているそうです。特にブドウやカキ、ミカンなどの果樹被害が問題になっています。ハクビシンも屋根裏や床下に棲みつき、騒音・糞尿による悪臭被害を起こします。

・生態と対策
埼玉でハクビシンの目撃例が増加しているそうですが、それにはハクビシンの高い繁殖力により個体数が増加したこと、人家の近くに住むようになったことなどが理由として考えられます。そこで、ハクビシンの増加率はどのくらいかを調べたようです。

増加率を調べるために繁殖力と寿命の推定を行いました。
寿命の判定には、まず月齢を推定します。これは、歯の生えそろいで推定できるようです。
乳歯が生えそろっていれば6ヶ月以上、そろっていなければ6ヶ月未満で、永久歯が生えそろっていれば17ヶ月以上だといえます。
これだけでは17ヶ月以上は年齢が不明ということになりますが、この年齢をはっきりさせなければなりません。
これを判明するにはアライグマ同様歯のセメント質の年輪を数えればよく、年輪数+12ヶ月が大体の年齢だといえるそうです。
このように月齢・年齢を推定する方法はわかってきましたが、寿命の推定にはまだ至ってないようです。飼育下では寿命が20歳を超える個体もいるようです。
繁殖は、12ヶ月齢以前は繁殖に非参加のようです。
出産は秋頃、出産頭数は約2~4頭とのことでした。アライグマはある時期にぴたっと子供が見られなくなるのに対し、ハクビシンは子別れはあまりみられないようで、ゆるりゆるりと親から離れていくらしいです。

次に被害対策のために行動を確認した例に移りましょう。
埼玉県で行動を確認した例では、住み着く場所は寺や人家などの建築物の天井裏のようです。
1個体が複数の休息場所をもっているらしいです。その利用には行動における規則性がなく、餌との関係で決まるようです・・・つまり被害が激しい場所の近くに必ず寝場所を持っているといえます。
行動のほうでは、川も隔てて移動できるようです。しかし、それは川を渡っているのではなく、橋や水管橋を使うようです。また側溝、電線も移動手段となります。
アライグマは水系や緑がないと生息できませんが、ハクビシンは必ずしも必要ではないようです。
面白いことに、雨水側溝が分別されているところ(側溝が分流式ということでしょうか?)はハクビシンの個体が少ないという情報があります。この情報は検証待ちみたいです。

ハクビシンは夜行性で、冬は集落のほうにいることが多く、夏は集落と畑の両方に多く見られます。
夏は植物質を食べることが多く、秋口になると動物質も食べることがあるようです。鶏小屋へ侵入して被害を与えることもあります。

被害対策には、
・食を切る(食べさせない、餌になるごみをすてない)
・住を切る(屋根裏などへの対策)
・体を切る(個体数管理)
が大事といわれます。特に寝場所は餌場への前線基地となっておりますので、住を切る、すなわちハクビシンの寝場所をなくすことが被害防止への第一段階です。

実際に集落点検により発見された複数の寝場所を撤去した地域では、驚くほどの効果が見られているようです。
また、ハクビシンの被害であることに気づくことも大事です。夜、ハクビシンやアライグマが食害した跡を、朝カラスがつついているのをみて、カラスのせいだと感じてしまうことをなくすことが重要です。
ハクビシンは被害作物の皮を残す(果皮が柔らかいもの以外)傾向があるので、もし被害作物の皮が残っていたらハクビシンのことを疑ってみましょう。

ちなみに、ハクビシンは花粉と共にやってくるといわれています。
花粉も厄介ですが、農家にとってハクビシンも厄介ですね。

・感覚試験
ハクビシンの防除に役立てるため、感覚試験を行ったようです。
聴覚試験では、超音波は聴けるということがわかりましたが、超音波に対して怖がる様子はなく、効果はありませんでした。
味覚試験では、甘味や塩味、苦味などの嗜好性を判断しておりました。個体差はありましたが、塩味は濃度上げると好み、甘味は基本的に好むようです。苦味は感受性が高く、嫌いました。他には、酸味なども少し好むようですが、旨味については不明でした。アルコールは嗜好に対する個体差が多いようです。
跳躍試験では、フェンスを用いて試験しておりましたが、この高さが115㎝まで跳躍できた個体がおりました。試験に使ったフェンス上部にネコよけやベアリング、ガビョウなどを配置し、試験を行った結果もありましたが、これらの効果は全くありませんでした。フェンスは飛び越えるというよりも乗り越えるという感じであり、ジャンプはあくまでも障害物をよじ登るためのもののようです。
歩行試験では、太さを様々に変えたロープを用いて渡らせる実験しておりました。たるむロープも難なく伝い、0.8㎜のロープもわたることができるということが判明しました。しっぽでバランスをとっているのか、先天的にしっぽが巻いている個体ではバランスがとりにくそうでした。ですが落下することはなく、渡りきりました。つまり、電線だろうがなんだろうが簡単に渡ることができるようです。
ほかに、光の照射試験を行っておりました。これは強い光をあてても効果がなく、光の存在を無視したり、逆に興味深く光源を覗くこともしておりました。

以上の結果から、簡単なフェンスや超音波、さらに光を用いて防除をすることは難しいようです。
ハクビシンの鈍感力は天晴れですね。

・駆除
駆除方法は特に発表されませんでしたが、柵でハクビシンから果樹を守ることが提案されておりました。「白落くん」という名のついた埼玉方式の被害防止柵がありました。
しかし、事情により詳しく発表されなかったので割愛させていただきます。


■ヌートリア
・被害と生態
ヌートリアは1950年頃に放逐されました。毛皮用として導入されたのが主ですが、水草防除のために導入されたところもあります。
ヌートリアは、2005年の兵庫県においてほぼ全域に見られておりますが、被害はまだ深刻ではないようです。
食植性なのに侵略的だといわれているのは、植生被害、農作物被害、堤防被害だけでなく、そこから付随して起こる水害や経済被害、希少種などへの生活史被害もあるからです。高密度になるとドブ貝も食べたりするそうです。
産子数は平均6頭、3~7ヶ月で性成熟します。年に2、3回出産し、野生での寿命は2年ほどではないかといわれております。また、いつ捕獲しても5~7割のメスが妊娠しているようです。

メスの体重をため池と河川を比較したところ、メス体重はため池のほうが大きく、ため池では高密度化できるという面白い結果もありました。

・駆除
捕獲にはトラバサミや箱ワナを用います。イギリスではいかだに箱ワナを仕掛けるという工夫もしていたようです。
捕獲対策は労力を集中し、まとまった根絶地域を作ることが大切なようです。
根絶に成功した地域への再侵入確率を求めるというシミュレーションがありましたが、全域ランダムに根絶地域を作るのと、地域集中で根絶地域を作るのでは、明らかに地域集中のほうが再侵入確率が低いという結果になっておりました。

他に、ヌートリアは水位変動に弱いと言われております。水を抜いたり入れたりすると生活史が攪乱され、営巣場所や採食、繁殖が阻害されるようです。
この水抜きの効果として、ヌートリアの逃亡や死亡、抽水植物の復活などが上げられております。
ため池管理では、かつて水抜きの際に住民総出で池の魚を捕まえるということがよくあったそうで、これを「じゃことり」といいました。
このじゃことりを行った池ではヌートリア確認数が0になるという結果があり、水位の低下だけではなく、同時に堤防の草払い、野焼きなども影響して効果が出たのではないかといわれております。

総合討論ではヌートリアの防護柵についての話が出ておりましたが、ヌートリアの被害は単発的であり、深刻さも薄いため、特別にヌートリア用の柵を作る必要はないのでは、という意見がありました。


読破ご苦労様でした。以上、大分駆け足でしたが、このような内容となっておりました。
どんな外来生物でも、生態調査というのは結構重要です。
生態・生活史を知っていればこそより効率の良い駆除ができるのです。
だってそうでしょう?子供をたくさん生んだあとの季節に捕獲するとなると非常に労力が増えますから。
詳しい行動や生態がわかってこそ、我々の農林業・文化・生態系が守られるのです。

これらの外来生物の問題でお悩みのかたがた、是非敵を知ってください。そして自分に何ができるのかを考え、行動してください。

敵を知り、己を知らば百戦危うからず。

孫子の兵法は、現代の自然相手にも通用するのです。


参考:森林技術 第803号 日本森林技術協会 2009
2009.05.31 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://ligustrum.blog21.fc2.com/tb.php/142-747ab35d

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。