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こんにちは!もうぼちぼちセミが鳴きはじめてますねー。
そして熱帯夜。ゆでだこになりそうです。

前回の生態学会忘備録記事外来種の管理をめぐる人々の意識と意思決定?の後編になります。

今回は「よかれと思った対策と実際の効果との間に生じるギャップ」という講演のメモ書きをまとめていきます。
内容としてはあまりメソプレデターリリースと関係ありませんでしたが、それでも面白い発表でしたので、是非私のメモですがご覧ください。

・よかれと思った対策と実際の効果との間に生じるギャップ
この発表は実に興味深かったです。何故駆除しても駆除しても減らないのか、うまくいかないのか、ということをわかりやすく説明してあったのです。効率的な駆除とは何か、考えさせられる発表でした。

ある地域では、ノネコを駆除したところ、外来種のウサギが急増し、植生破壊が起こったそうです。
同様にある地域では、ハブ対策にマングースを導入したところ、ハブを食べずにクロウサギを食べてしまったそうです。・・・奄美ですね。
このような事態になってしまったのは、知らなかったからなんでしょうか。それともうすうす知ってはいたけど対策に反映されなかったのでしょうか。

人は、知らないこと(潜在的なリスク)を無視したり、過小評価してしまいがちなのだそうです。知っているつもりになってしまうのだそうです。
しかし、知らないことを対策に反映させると、対策が無駄になるリスクもあります。
この無駄になるリスクを回避しようと心理的に動いてしまうので、結果として逆の効果が得られたり、効果が得られなかったりてしまうのです。
このような効果が得られない例はノイヌやザリガニの駆除で起こっております
この話はまた後ほどに。

まず、よかれと思って法律で指定したがために、逆効果がおこった事例というものがあります。
天然記念物法では、指定されている動物を殺すのは許されません。
奄美の例を見てみましょう。奄美では、クロウサギやアマミトゲネズミ、ルリカケスなどが天然記念物に指定されております。これらの最大捕食者は、マングースです。

マングースは特定外来生物にも指定されており、わなで捕獲されてきました。
と同時に、これらの天然記念物も年に1~10頭くらい混獲されていました。

天然記念物は、混獲されると最悪死ぬか、怪我を負います。現状変更が禁止のため、法律に抵触してしまいます。そのため、マングースの捕獲中止が一時起こったのです。
今は再開されておりますが、希少種がとれにくいわなの設置もおこなわれました。
捕獲中止も、希少種がとれにくいわなも、結局両方取れなくなるのです。

1匹のマングースが1年に食べるエサの量は、ある例では年にカエル12、クロウサギ4、トゲネズミ4、ケナガネズミ4で、他は昆虫類がほとんどだったそうです。
さて、ほとんど昆虫食だからいいじゃないか、と思う方がいるかもしれません。
しかしマングースは1匹ではありません。
2000匹いるとどうなるでしょう。単純計算、クロウサギは8000匹食べられていることになります。

混獲で犠牲になるものと、マングースに食べられるものには数百倍の差があるのです。これを問題にするのはいかがなものでしょうか。
天然記念物を守る法律が、天然記念物を絶滅に追い込みかねない事例でした。

さて、話は先ほどの効果が得られないもの、逆効果のものに戻ります。
まずはノイヌから。

奄美では、マングースだけでなくノイヌも問題になっております。
クロウサギやトゲネズミ、ケナガネズミをたくさん食べるそうです。
なのでマングース同様駆除しなければならないのですが、駆除だけでは難しい、というよりも効果が薄い。

なぜなら、ノイヌのわなはマングースのものよりも大きく、効率が悪いです。
また、エサが少ないため、ノイヌは山ではいずれ死ぬ、ということがいわれているからです。

捕獲は年間600頭前後だそうですが、根本的に捨てさせないことが大事であり、ノイヌの供給を絶つほうが優先されるのです。

ザリガニはどうでしょうか。
ザリガニは、じつは捕獲以上の増加率を持つ、といわれます。
とくにザリガニの幼体は落ち葉などを主食としております(実際に水中の落ち葉に群がる数ミリのザリガニを見たことがあります)。

ザリガニの密度は落ち葉の流入量に比例するらしいので、ザリガニを駆除するならば、カゴなどのでの駆除だけではなく、落ち葉を抑制する森林管理が必要になるのです。


さて、お次はマングースの駆除の話です。先ほどのは法律関係でしたよね。
マングースもただ取るだけでは根絶が見込めません

奄美では、なんとマングースの個体群動態には冬鳥のシロハラが影響を及ぼすかもしれないのだそうです。
年によってシロハラの飛来数が大きく変化するのだそうで、これに応じて駆除方法を考えれば、もしかしたら効率のいい駆除方法がみつかるかもしれません。

駆除をいつやればマングースの増加率を抑えられるのか。
通常シロハラは12~1と4~5月に飛来するのだとか(U1うろ覚えです)
ですのでマングースは冬場前の駆除が効果がある、ということでした。


外来植物でも、ただ駆除するだけではだめなのです。
琵琶湖にいる植物種のうち480種の約1/3が外来だといわれております。

特定外来植物のミズヒマワリの駆除は、取り残しを15%以下にしなければ翌年回復してしまうのだそうです。
春~晩秋が駆除時期といわれており、これを逃すとコストが4倍なのだとか。

要注意外来植物にチクゴスズメノヒエというのがあります。このチクゴスズメノヒエ群落に特定外来植物のナガエツルノゲイトウが侵入し、置換してしまうことがあります。
駆除費用は数年放置しただけで数千万になるというのです。

問題の解決には多くの金額と時間と労力が必要になってしまいます。

外来生物は予防が原則です。この予防原則を実行するには、駆除を考えるときにリスクを負う姿勢が大事なのです。



最後駆け足気味でしたが、なかなかに興味深いシンポジウムだったと思います。
やはり学会は楽しいですね!!社会人になってしまった今でも、なんとかいけるようにがんばりたいところです。
2010年3月の学会の防備録はまだまだありますので、来年の学会が始まる前には全部書けるようにしたいですね。

最近はニュース記事も書いてないですし、他にも書きたい内容があるので、ちょいと忙しくてもぼちぼち更新していきたいと思います。ではでは。
2010.07.20 / Top↑
前回の生態学会忘備録記事生物多様性関連集会:特定外来生物の分布状況2010につづきまして、第二弾。
2010年3月の生態学会でおこなわれましたシンポジウム『外来種の管理をめぐる人々の意識と意思決定』の記事を書こうと思います。
文章だけの記事になりますので、最近活字離れの方は是非どうぞ。

このシンポジウムでは、最初に外来生物の基本的な紹介があったあと、外来種と在来種の人々の選好についての調査や、環境経済学から外来生物問題についてアプローチしていくといった内容があり、また、終わりのほうには対策と効果に生じているギャップなどが紹介されておりました。

今回の学会の外来生物関係で、大きなキーワードとなったのがメソプレデター(Mesopredator:中位捕食者)だったように感じます。
普通に数年前からあった話でしょうけれど、昨年はあまり聞かなかったものですから。


・外来種のリスクと管理について
現在外来種のリスク(被害額)は、全世界で1.4兆米ドル/年だそうです。非常に大きな額過ぎていまいち実感がわきませんね。
この外来生物に対し、検出発見・検疫防除・駆除・コントロールといった階層的な管理手段がなされてきているようです。

法律も各種整備されており、外来生物の侵入を防ぐのは何も外来生物法だけでなく、植物防疫法や家畜伝染病予防法、持続的養殖生産確保法や水産資源保護法などがあります。外来生物の侵入拡散阻止を目的としたものは外来生物法ですが、その他の法でも結果的に外来生物対策になっているものはあるのですね。
ただ、法律はあくまでも法律であるため、現実的に限界がある部分もある、というのが考えさせられました。

今、国内各地で外来生物の活動が行われております。これに補助金とかを検討していたり、逆に外来生物を扱う業者には課税をするという案も出てきているそうです。まだ実現段階ではない、と話されておりました。
しかし、国内では環境省の「生物多様性保全推進支援事業」というものがあったりしますので、全く補助金的なものが無いわけではないですね。課税はいい案だと思います。ただ、これをするには様々な検討が必要そうです。外来生物を取り扱ったもの全般課税となってしまっては、ペット業界や園芸学会がYESと言いませんからね。。

各地の地道な駆除活動は、様々な問題を抱えているそうです。生態的には、駆除活動によって他の外来種が増加してしまったり(メソプレデターリリース:Mesopredator Release)、駆除活動自体の在来種への影響がわからないまま。個人的には専門家不足も入れたいところです。

社会的には、費用負担が大きかったり、ボランティア活動だったり、駆除費用がでなかったりすることです。
確かに経済活動に結びつきにくいのはなかなか問題ですよね。

もう一つ、外来生物にプラスとマイナスの面があることを考えてから駆除しなきゃいけないというのは、確かに、と思いました。
この発表では南アフリカフィンボスの外来アカシア林の例をだしていました。もっとわかりやすくいえば日本のブラックバス論争もプラス派とマイナス派のせめぎあいでしたね。論争にはなっていませんが、タイのナイルティラピアもプラスの面が大きくて現在問題になってはいないのではないでしょうか。


・外来種と在来種の人々の選好
この発表はなかなか面白かったです。外来種と在来種の選好の差や、外来種駆除肯定・反対の意見を紹介しておりました。アンケート分析みたいな研究でした。

駆除肯定派の意見は省きますが、駆除反対派の意見は、例えば、駆除は人の身勝手であるとか、持ち込んだ人を処罰すればいいとか、生活に支障が無ければ駆除は必要ない、といったものでした。よくある意見かもしれませんが、私は家族からこういう意見をいわれたことがあるので、生態学を学ばない者の共通認識なんだなぁと感じました。

共存派の意見は、生き物を殺すことに抵抗感があったり、外来生物の悪影響の実感が無い、というものでした。むしろこちらが貴重な意見ですね。

なお、全ての在来種を守りたい傾向は表れ、全ての外来種の防除は志向が弱いというのも興味深かったです。

生き物の選好はだいぶ異なり、外来種ではカミツキガメやブラックバス、スクミリンゴガイへの選好が強く、在来種ではメダカやオコジョ、ヤマセミなどへの選好が強いというものでした。

この結果とは別に、アンケートとること自体も環境教育になるという意見はなるほど、と思いました。


・環境経済学のアプローチ
この話は生き物系の人には難しいと思いました。正直私も理解し切れませんでした。
なので説明が出来ません・・・。一応ざっくりと書きます。
政策を実施するには、費用便益分析を行うそうです。便益が費用より大きければ政策を実施するらしいです。
生態系保全の便益は、社会にとっての生態系保全の価値、ということになります。
つまり、生態系保全にいくら払えるか、ということです。

ここで、発表者の方は仮想評価法という手法を用いてました。
将来こうなるとしたら、いくら払ってもいいですか?という質問を直接聞くものだそうです。
途中は省きますが、このような手法で聞いていくと、ブラックバスやザリガニの根絶には抵抗感があり、減らせば減らすほど好ましいというものではないという結果になったそうです。
これは個人によって価値観に差があることから生じたものだそうで、ブラックバスについては特に選好性がだいぶことなるのだそうです。

しかし、全体として外来種管理について、人は何らかの対策をとることを強く望んでいるという結果が見られたそうです。そうなったのは元気付けられる話ですね。
ただ、根絶が望ましいと評価されているわけではないのも、我々は一考せざるを得ないものであります。


このシンポジウム忘備録は続いており、次の話は「よかれと思った対策と実際の効果との間に生じるギャップ」になりますが、やけに長くメモしており、これ以上書くと長くなりすぎるため次の記事でまとめようと思います。それでは!
2010.05.09 / Top↑
2010年3月15日。今年の生態学会の始まりの日です。
東大駒場。今年の生態学会の開催地です。

学生として最後の学会参加になっちゃうかもしれませんので、たくさん参加して知識を仕入れてこようと思います。

ということで、昨日行われたシンポジウム的なものに参加してきました!
私が参加したのは、生物多様性関連集会:特定外来生物の分布状況2010というものでした。

外来生物法の特定外来生物に指定されている種について、現在の分布を明らかにし、普及啓発及び情報の共有のための集会という感じでした。

まず分布情報の必要性だとかについて軽くお話があった後、各分類群の分布状況を報告していく、というものでした。
さすがに特定外来生物全てを話すだけあって、かなり駆け足だったので詳しく報告することは致しませんが、忘備録として気になったことやなるほどと思ったこと、印象に残ったことを書いていくことにします。

・分布情報について
同じ調査データを用いても、さまざまな分布図が作れることが印象的でした。
例えば、同じアライグマ分布情報を、市町村レベルにするのと、都道府県レベルにするのと、5kmメッシュで表すのでは性格が大きく変わってきます。
同じデータでも性質の違う分布図が作れるのです。

都道府県別の分布情報⇒普及啓発
市町村別の分布情報⇒対策・防除

など、使い分けられるのですね!!

また、分布情報は各地の団体や専門家に任せることになるので、情報に偏りが生じるのも問題だ、ということがわかりました。
例えば外来植物ですと、山梨や長崎の情報が少なめなんだそうです。

・爬虫類

爬虫類、特にカメ(ワニガメ・カミツキガメ)とかヘビとかがよく野外で見つかって紙面やワイドショーを騒がせますが、なんとそれらは拾得物として警察に届けられ、さらに落し物情報として検索までできちゃうのだそうです!!

ちょっと面白いですよね(^^)
さすがに具体的な種まではわからないそうですが、どこでどんなものが遺棄されているのかを知ることはできそうです。

もう一つ、そういえばそうかと思ったことがあります。
よくカミツキガメはニュースになりますが、見つかったからといって、最近捨てられたというわけではないのですね。
少し考えればわかることですが、意外と忘れがちな落とし穴です。

カメは40年くらい生きることもあるので、昔捨てられたやつが今になって発見されたことも考えられるのです。
カメの状態で多少は把握できるでしょうが、注意しなければいけないことでした。

さらにもう一つ。
外来生物法が施行されてから、カミツキガメは基本的に飼養販売放逐が禁止になったので、カミツキガメの甲長が10cm未満の個体が発見される場所は繁殖している可能性がある、というのも興味深かったです。


・甲殻類
直接は内容と関係なかったのですが、ウチダザリガニだと在来種と間違えてしまいそうなことから、専門家の方はシグナルザリガニという呼称を提案中なんだそうです。
ウチダザリガニの英名はシグナル・クレイフィッシュ。
ハサミのつけねの白い模様を、飛行機を誘導する信号灯にみたててシグナルといっているらしいです。

私もウチダザリガニという呼称をやめてシグナルザリガニにしましょうかねぇ。
メリットはウチダザリガニとタンカイザリガニをまとめて呼べること、外来種だと思いやすいことでしょうか。

・集会を通して
他にも各分類群の分布について発表されておりましたが、割愛いたしますね。

一番印象に残っていたのは、集会を通して情報の一元化が叫ばれていたことです。
情報の一元化とは、おそらく各地に分散している分布情報だとか、インターネットにあるさまざまな機関が調べている情報だとかを統合して、誰もが使えて精度の高いデータベースを構築するということなのでしょう。おそらく。

実際、国立環境研究所の侵入生物データベースが、少しずつ内容を充実させつつあるそうで、英語化もするのだとか。

情報の一元化は必要です。誰か一人しか知らない情報は、意味のない・・・というより、もったいないものですから。
ただ、一つ思ったのは、この一元化は誰がやるのでしょうか?国立環境研究所でしょうか?

外来生物情報は現在泡のようにあふれておりますので、そろそろ包括して体系立てる時期なのかもしれません。
そのうち外来生物学ができちゃったりして。



とりあえず今回の記事は以上です。
まだまだ生態学会真っ只中で、たくさんの発表やシンポジウムが開催されますので、面白い・興味深いものがありましたら著作権などに十分注意をして記事にしていきますね。

十分注意をいたしますが、万が一問題がございましたら至急お知らせいただけると助かります。
2010.03.16 / Top↑
こんにちは、ゆーにです。今日の記事は!国際生物多様性の日シンポジウム!ではなく!約4ヶ月前に行われたシンポジウムの報告をします(^^;)遅筆ですみません。
今日の記事は長い上にちょっと専門的です。がんばって読んでください(笑)

2月11日、日本獣医生命科学大学にて、「外来野生動物を知って農林業文化を守る」というシンポジウムが開かれ、参加してまいりました。

日本の外来野生動物による農林業被害は2007年度で全国1625ha、被害額は5億8000万円にのぼったといわれております(農水省)。これらの外来野生動物は野菜・果物だけでなく、人家へも被害を及ぼしています。

そこで、アライグマやハクビシン、ヌートリアなどの外来野生動物の生態と具体的な被害防除について研究成果を発表し、広く社会に知っていただくため、シンポジウムが開催されました。

講演者は大学や研究機関、NPOの方々全部で10名でした。

それぞれすばらしい講演をしてくださり、その内容をある程度メモしてありますが、講演者順に記していくと内容が前後するので、ハクビシンやアライグマなど動物ごとに面白いと思った内容、これは重要だと感じた内容をまとめていきますね。

参考は森林技術第803号、またシンポジウムの発表からです。

■アライグマ

・目撃例
アライグマは、平成20年にはもはや全国各地で見られるようになっております。全国で繁殖しているというわけではありませんが、目撃(確認)されているようです。
関東では、特に神奈川県の三浦半島と埼玉県の旧比企郡に集中しているようです。

・被害
農林水産省の統計では、アライグマの被害額が増えているようです。トウモロコシ、メロン、スイカに大きな被害があります。一晩で100㎡のトウモロコシ畑が全滅したこともあります。
また、人家の屋根裏や床下に棲みつき、騒音被害、糞尿の悪臭被害も起こしております。

・生態と対策
アライグマは夜行性で、森林からはあまり離れないようです。水系沿いに現れることが多く、針葉樹林地よりも広葉樹林地のほうが多いようです。
昼間のねぐらは樹洞、樹上、土穴、側溝、排水管ネットワーク、人家(特に人が住まなくなった場所)などだそうで、出産場所は土穴、樹洞などだそうです。土穴はアナグマが掘ったものなどを利用します。

アライグマ対策を行うには、どれくらいアライグマが生息しており、どれくらいの増加率で増え、どれだけの捕獲努力をかければいいのかを知ることが重要になります。

アライグマの増加率を調べる上で重要なのが出産率などの生態と死亡率です。
北海道で調べられた限り、まずアライグマの交尾ピークは2月、出産ピークは3~5月、授乳は4~6月、離乳は7月以降だったそうです。離乳後、ある時期にぴたっと子供がいなくなり、子別れをするそうです。
また繁殖率は、0歳では0%(産子数0匹)、1歳だと66%(産子数3.6±1.3匹)、2歳以上だと96%(産子数3.9±1.3匹)だったようです。
千葉や大阪、和歌山で調べられたものとあわせると、1歳の繁殖率が50~73%、2歳が81~100%であり、平均産子数が1歳で2.0~3.6匹、2歳で3.6~3.9匹だったそうです。地域差はあまり無いようです。

ちなみに、アライグマの年齢を調べるのには、歯のセメント質に形成される成長線を数えることで推定できるようです。

今では、増加率と死亡率をあるモデルに入れ、今後の個体群動態をシミュレーションし、そこから捕獲率や捕獲時期などを変えることで根絶にかかる時期や捕獲効果を検証できるそうです。

根絶には、夏以降に行われる農作物被害対策の駆除では不可能です。
というのは、農作物の収穫時期の捕獲率は、他に食べるもののない春季と比べて3分の1に低下してしまうからです。
アライグマの生育確認後早期に駆除に乗り出すほうが費用対効果が高く、大規模な捕獲対策が根絶への近道です。

アライグマの授乳期(春季)における集中的捕獲が個体数増加の抑制に効果的です。

駆除以外の方法では、物理的な防護柵、音や光、忌避物質を用いることもできますが、一時的にしか効かず、時間経過とともに効果が薄れていくようです。
テーピング法というトウモロコシを茎ごとビニールテープで巻いてしまう方法もある程度効果が出るそうです。が、もっとも効果が高いのは電気柵で、物理柵よりも効果は低くなります。
物理柵は、一部分だけを多い、一部分を食害用に開放するといった措置をとれば、完全に防止することはできませんが囲った部分の被害を抑えられる可能性が高くなります。




無  何もしない
小  テーピング法      小規模農園向き
中  物理柵(防風ネット)  中規模農園向き
大  電気柵          大規模農園向き

というようにまとめられるようです。対策者ごとに収穫物の必要量を考慮し、それに見合う対策を行うことが大事です。

・駆除
捕獲個体の分析によるモニタリング、箱ワナ以外の捕獲方法の開発などを今後行う必要があります。
ねぐらをコントロールできれば防除に有効ともいわれます。
ワンウェイ・ゲート方式のワナも開発中だそうです。

トラップシャイな個体もいるので、そのような個体をどう対策するかも今後必要となります。


■ハクビシン

・被害
アライグマと同様、ハクビシンも被害額が増えているそうです。特にブドウやカキ、ミカンなどの果樹被害が問題になっています。ハクビシンも屋根裏や床下に棲みつき、騒音・糞尿による悪臭被害を起こします。

・生態と対策
埼玉でハクビシンの目撃例が増加しているそうですが、それにはハクビシンの高い繁殖力により個体数が増加したこと、人家の近くに住むようになったことなどが理由として考えられます。そこで、ハクビシンの増加率はどのくらいかを調べたようです。

増加率を調べるために繁殖力と寿命の推定を行いました。
寿命の判定には、まず月齢を推定します。これは、歯の生えそろいで推定できるようです。
乳歯が生えそろっていれば6ヶ月以上、そろっていなければ6ヶ月未満で、永久歯が生えそろっていれば17ヶ月以上だといえます。
これだけでは17ヶ月以上は年齢が不明ということになりますが、この年齢をはっきりさせなければなりません。
これを判明するにはアライグマ同様歯のセメント質の年輪を数えればよく、年輪数+12ヶ月が大体の年齢だといえるそうです。
このように月齢・年齢を推定する方法はわかってきましたが、寿命の推定にはまだ至ってないようです。飼育下では寿命が20歳を超える個体もいるようです。
繁殖は、12ヶ月齢以前は繁殖に非参加のようです。
出産は秋頃、出産頭数は約2~4頭とのことでした。アライグマはある時期にぴたっと子供が見られなくなるのに対し、ハクビシンは子別れはあまりみられないようで、ゆるりゆるりと親から離れていくらしいです。

次に被害対策のために行動を確認した例に移りましょう。
埼玉県で行動を確認した例では、住み着く場所は寺や人家などの建築物の天井裏のようです。
1個体が複数の休息場所をもっているらしいです。その利用には行動における規則性がなく、餌との関係で決まるようです・・・つまり被害が激しい場所の近くに必ず寝場所を持っているといえます。
行動のほうでは、川も隔てて移動できるようです。しかし、それは川を渡っているのではなく、橋や水管橋を使うようです。また側溝、電線も移動手段となります。
アライグマは水系や緑がないと生息できませんが、ハクビシンは必ずしも必要ではないようです。
面白いことに、雨水側溝が分別されているところ(側溝が分流式ということでしょうか?)はハクビシンの個体が少ないという情報があります。この情報は検証待ちみたいです。

ハクビシンは夜行性で、冬は集落のほうにいることが多く、夏は集落と畑の両方に多く見られます。
夏は植物質を食べることが多く、秋口になると動物質も食べることがあるようです。鶏小屋へ侵入して被害を与えることもあります。

被害対策には、
・食を切る(食べさせない、餌になるごみをすてない)
・住を切る(屋根裏などへの対策)
・体を切る(個体数管理)
が大事といわれます。特に寝場所は餌場への前線基地となっておりますので、住を切る、すなわちハクビシンの寝場所をなくすことが被害防止への第一段階です。

実際に集落点検により発見された複数の寝場所を撤去した地域では、驚くほどの効果が見られているようです。
また、ハクビシンの被害であることに気づくことも大事です。夜、ハクビシンやアライグマが食害した跡を、朝カラスがつついているのをみて、カラスのせいだと感じてしまうことをなくすことが重要です。
ハクビシンは被害作物の皮を残す(果皮が柔らかいもの以外)傾向があるので、もし被害作物の皮が残っていたらハクビシンのことを疑ってみましょう。

ちなみに、ハクビシンは花粉と共にやってくるといわれています。
花粉も厄介ですが、農家にとってハクビシンも厄介ですね。

・感覚試験
ハクビシンの防除に役立てるため、感覚試験を行ったようです。
聴覚試験では、超音波は聴けるということがわかりましたが、超音波に対して怖がる様子はなく、効果はありませんでした。
味覚試験では、甘味や塩味、苦味などの嗜好性を判断しておりました。個体差はありましたが、塩味は濃度上げると好み、甘味は基本的に好むようです。苦味は感受性が高く、嫌いました。他には、酸味なども少し好むようですが、旨味については不明でした。アルコールは嗜好に対する個体差が多いようです。
跳躍試験では、フェンスを用いて試験しておりましたが、この高さが115㎝まで跳躍できた個体がおりました。試験に使ったフェンス上部にネコよけやベアリング、ガビョウなどを配置し、試験を行った結果もありましたが、これらの効果は全くありませんでした。フェンスは飛び越えるというよりも乗り越えるという感じであり、ジャンプはあくまでも障害物をよじ登るためのもののようです。
歩行試験では、太さを様々に変えたロープを用いて渡らせる実験しておりました。たるむロープも難なく伝い、0.8㎜のロープもわたることができるということが判明しました。しっぽでバランスをとっているのか、先天的にしっぽが巻いている個体ではバランスがとりにくそうでした。ですが落下することはなく、渡りきりました。つまり、電線だろうがなんだろうが簡単に渡ることができるようです。
ほかに、光の照射試験を行っておりました。これは強い光をあてても効果がなく、光の存在を無視したり、逆に興味深く光源を覗くこともしておりました。

以上の結果から、簡単なフェンスや超音波、さらに光を用いて防除をすることは難しいようです。
ハクビシンの鈍感力は天晴れですね。

・駆除
駆除方法は特に発表されませんでしたが、柵でハクビシンから果樹を守ることが提案されておりました。「白落くん」という名のついた埼玉方式の被害防止柵がありました。
しかし、事情により詳しく発表されなかったので割愛させていただきます。


■ヌートリア
・被害と生態
ヌートリアは1950年頃に放逐されました。毛皮用として導入されたのが主ですが、水草防除のために導入されたところもあります。
ヌートリアは、2005年の兵庫県においてほぼ全域に見られておりますが、被害はまだ深刻ではないようです。
食植性なのに侵略的だといわれているのは、植生被害、農作物被害、堤防被害だけでなく、そこから付随して起こる水害や経済被害、希少種などへの生活史被害もあるからです。高密度になるとドブ貝も食べたりするそうです。
産子数は平均6頭、3~7ヶ月で性成熟します。年に2、3回出産し、野生での寿命は2年ほどではないかといわれております。また、いつ捕獲しても5~7割のメスが妊娠しているようです。

メスの体重をため池と河川を比較したところ、メス体重はため池のほうが大きく、ため池では高密度化できるという面白い結果もありました。

・駆除
捕獲にはトラバサミや箱ワナを用います。イギリスではいかだに箱ワナを仕掛けるという工夫もしていたようです。
捕獲対策は労力を集中し、まとまった根絶地域を作ることが大切なようです。
根絶に成功した地域への再侵入確率を求めるというシミュレーションがありましたが、全域ランダムに根絶地域を作るのと、地域集中で根絶地域を作るのでは、明らかに地域集中のほうが再侵入確率が低いという結果になっておりました。

他に、ヌートリアは水位変動に弱いと言われております。水を抜いたり入れたりすると生活史が攪乱され、営巣場所や採食、繁殖が阻害されるようです。
この水抜きの効果として、ヌートリアの逃亡や死亡、抽水植物の復活などが上げられております。
ため池管理では、かつて水抜きの際に住民総出で池の魚を捕まえるということがよくあったそうで、これを「じゃことり」といいました。
このじゃことりを行った池ではヌートリア確認数が0になるという結果があり、水位の低下だけではなく、同時に堤防の草払い、野焼きなども影響して効果が出たのではないかといわれております。

総合討論ではヌートリアの防護柵についての話が出ておりましたが、ヌートリアの被害は単発的であり、深刻さも薄いため、特別にヌートリア用の柵を作る必要はないのでは、という意見がありました。


読破ご苦労様でした。以上、大分駆け足でしたが、このような内容となっておりました。
どんな外来生物でも、生態調査というのは結構重要です。
生態・生活史を知っていればこそより効率の良い駆除ができるのです。
だってそうでしょう?子供をたくさん生んだあとの季節に捕獲するとなると非常に労力が増えますから。
詳しい行動や生態がわかってこそ、我々の農林業・文化・生態系が守られるのです。

これらの外来生物の問題でお悩みのかたがた、是非敵を知ってください。そして自分に何ができるのかを考え、行動してください。

敵を知り、己を知らば百戦危うからず。

孫子の兵法は、現代の自然相手にも通用するのです。


参考:森林技術 第803号 日本森林技術協会 2009
2009.05.31 / Top↑

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